moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

ディズニーのシリー・シンフォニー


Silly Symphony Flowers And Trees

荒れ模様の朝。窓から眺めると、みどり色のグローブのように枝の先に葉をつけた木々がわっさわさと揺れていて、まるクネクネと踊っているようにみえるーー ああ、あれだ、「シリー・シンフォニー」というディズニーの初期のアニメーションで見たのと同じだーー そう思って「Trees And Flowers」(1929)をひさしぶりに見た。花やキノコがラジオ体操をするシーンがあるのだけれど、アメリカにラジオ体操なんてあるはずないよね、と思ったら、ラジオ体操のルーツってじつはアメリカらしい。1922年にボストンのラジオ局でスタート、日本のラジオ体操の原型となったのは1925年にはじまった<Setting Up Exercise>という番組なのだとか。みんなが号令に合わせて一斉にからだを動かすなんていかにも日本人好みな気がしていただけに、ちょっと意外な気がしている。

誰でも知っていると思うなよ

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駅でホームの階段を駆け下りようとしてギョッとした。巨大な彌生ちゃんと目があったからだ。正体は、正面に貼られた開催中の展覧会の巨大ポスター。ここで大事なのは、ぼくが<草間彌生を知っている>にもかかわらず驚いたことである。たとえば幼児とか外国人とか、つまり<草間彌生を知らない>ひとが同じシチュエーションに遭遇したらどうか、ちょっと心配である。ならばニッコリ微笑んでいればいいかといえば、それはまた別の問題だ。ニッコリ微笑む彌生ちゃんには、また別の種類の恐ろしさがある。問題は複雑だ。

賛歌

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コスプレというものがあるが、その要領で、詩人になりきって詩を書いてみた。シュークリームを買った俺はえらいという詩である。

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家は買えないが、おれはシユウクリームを買う。

家は味気ないが、シユウクリームはうまい。

シユウクリームは冷やすとさらにうまくなるが、冷やした家はただ薄ら寒いだけだ。風邪を引くゾ。

家は焼けて灰になつてしまつたりするが、こんがりキツネ色に焼けたシユウクリームはますますいい感じだ。

シユウクリームは雲のやうにふんわりしてゐるが、家は硬い。そのくせ「堅牢」だとか云つて威張りくさつてゐる。権威主義だ!

だいいち、ここが肝心なところだ、家は買えても家庭は買えないが、シユウクリイムをひとくち齧つてみろ。ほうら、しあわせな気持ちがするだらう。

勝負あり!女神の祝福はシユウクリームの頭上に!

家は買えないが、きのうオレはシユウクリームを買つたのだ。断然おれは偉い。

野の羊

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このあいだの雨の日、フィンランドで研鑽を積んだ声楽家駒ヶ嶺ゆかりさんのミニコンサートを聴いてきた。「野の羊」という曲がよかった。大木惇夫の詩だ。男がひとり草原にやって来てつぶやく。「野っぱらはいいな。いつ来てみてもいいな。」気づけば、遠くにポツンと放し飼いにされたヒツジが一匹たたずんでいる。独りだな…… 毛並みはいいけれど、あまり目はかけられていないらしいな…… ひもじそうだな…… でも…… 恨まない目をしているな。男は思う。なんだ、オレと同じじゃないか。「野っぱらはいいな。さびしくていいな。」

円波

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恩地孝四郎の「円波」。中国で出会った、池の桟橋で洗濯をする少女の姿を木版画にしている。戦後は丸や四角を思いきって配したような抽象的な作風に変化してゆくが、これが制作された昭和14(1939)年はちょうどその過渡期にあたる。乱暴に、画面下から上へと屈折しながら延びた直線の先にはヴィヴィッドな青と黒、幾重にも重なった白い楕円…… すでに片足と言わず、抽象の沼にズブズブはまり込んでいるようにぼくには映るのだけど、みなさんにはどうだろう。じつはこの作品には元になったスナップ写真が残されていて、それを見るかぎりかなり忠実に再現されているのだが、平凡な風景も彼の目にはこんなふうに抽象化されて見えていたのかと思うととてもふしぎに面白い。

みかけによらない

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つい最近になって知ったことのひとつに、ソメイヨシノはバラ科というのがある。お前いつからバラだったの? ちょっぴり裏切られた気分で、桜の樹の前で立ち止まり思わずつぶやいた。思えば、トマトだってあんな顔してて実はナス科だったりする。もしも14歳だったら、世界の何もかもが信用できなくなって不良に走るレベルだ。歯医者のつもりでドアを開けたら産婦人科でした、それくらいの「みかけによらない」である。人間だと思ったらイヌ科とか、カタツムリだと思ってたのになんだよ意外にヒト科なの?とか、そんなことがあったらどうするんだ!! いや、案外それはそれで楽しいね。

サルミアッキ愛

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フィンランドにコスケンコルヴァというウォッカがある。左が先日お客様からいただいたラクリッツ味、右がスタッフからもらったサルミアッキ味。ラクリッツというのは甘草(カンゾウ)というハーブのエキスからつくるドロップあるいはグミのお菓子で、それに塩化アンモニウム(!)を加えたものがサルミアッキと呼ばれる。どちらもフィンランドでは人気があり、子供からお年寄りまでむしゃむしゃ食べるが、日本人の場合、少なく見積もって3人に1人は悶死する。それはともかく、お酒とサルミアッキという、世界でいちばん好きなものふたつを一緒に混ぜちゃったら最高にハッピーじゃね!?というフィンランド人の思考回路の単純明快さがなにより愛おしい。