moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

27.07.2018

 キャロットケーキを2台、イベントのために焼く。むかし、ストックホルムのソーデルマルム地区にあるこじんまりとしたカフェで食べた味を、お菓子作りの得意なスタッフにお願いし試行錯誤の末、再現してもらったレシピである。

 スパイスがガツンとくる、ひとことで言えば「やんちゃ」な味。ニンジンをたっぷり使い、くるみやレーズンは一切使わないという野生的なレシピながら、ニンジンの臭みや食べにくさはふしぎと感じられない。じっさい、この味を気に入ってくださるお客様も少なからずいて、ここ数年はいろいろあってメニューから消えていたのだが、それでもいまだにそのキャロットケーキめあてにご来店くださる方もちらほらいらっしゃるほどなのである。

 それがどういうわけか、その「やんちゃ」な味をぼくが受け継ぐことになった。まあ、元々の言い出しっぺはぼくなのだから当然といえば当然ではあるのだが。受け継ぐにあたり見た目はすこし変えてみたが、味はほぼそのまま変えていない。作っていると、以前よく召し上がってくださったあの顔やこの顔が思い浮かぶ。

25.07.2018-26.07.2018

25.07.2018

 きょうから2週間、平日のみ20時までの「夏時間」での営業。さっそく足を運んでくださったみなさま、どうもありがとうございました!

 エアコンが普及することでぼくらが失ったのは、あるいは「夏の宵」を楽しむ「粋さ」であるかもしれない。よく戦前の小説とか随筆を読んでいると、夕涼みを楽しむ人たちの姿と出くわす。彼らは日が暮れてから、場合によっては夕食をすませてから、ひとりで、または家族や友人と連れ立って散歩や買い物に繰り出す。場所は、川や池のほとりといった近所の水辺であったり、古本屋や喫茶店であったり、またただあてどなく夜の街を徘徊するだけであったりするのだが、なにか用事や買い物のためというよりも、それはまるで「夜風にあたる」ことこそが目的であるかのようにみえる。

 かつて銀座通りの東側、つまりいま「銀座シックス」があるほうにびっしり建ち並んでいたという「夜店」にしても、こうしたライフスタイルの中から生まれてきたものにちがいない。いずれにせよ、夕涼みがてらの夜歩きは、まだエアコンがなかった時代のくらしの知恵であると同時に、ただ職場と自宅とを往復するだけの都市生活者に「サードプレイス」をもたらすことで日々の生活にリズムと色彩とをあたえることにもつながったのだった。

 会社を出るとき、まだほんのり明るかったりするこの季節、まっすぐ家に帰る前にワンクッション、カフェでお茶でも飲んで粋な夏の宵を過ごしてみてはいかがでしょう。

 

26.07.2018

 朝、ゴミ出しに間に合うか心配でわざわざ一本早いバスに乗ったのに、事故で西武線が止まったあおりを受けて大混雑からの大遅延。道もずっと渋滞気味で、けっきょく店にたどりつくのに1時間半かかった。かろうじてゴミの回収には間に合ったものの、朝からぐったり。それにしても、ドキドキハラハラの原因が「ゴミ出し」というあたり、なんて俺の身の丈にあったスリルなのだろうと笑ってしまう。そういうアキ・カウリスマキ的な世界に生きている。

 さて、きょうは「夏時間」2日目。どんな出会いがあるかと思いきや…… 19時以降だれも、こない。早くも企画だおれの予感。凹む。

 けっきょくラストオーダーの時間になってもだれも来ないので、店を閉め、買い出しにでかける。コピスのカルディに行こうと思ったら、ちょうど上のHMVで脇田もなりさんがインストアライブをやっていた。前作あたりから制作に冗談伯爵(前園直樹+新井俊也)や元コーザ・ノストラの佐々木潤らが関わっていて気になってはいたのだが、生で観るのははじめて。声に伸びがあって気持ち良い。最後に歌ったミドルテンポの曲が特によかった。調べたら「青の夢」という、最新アルバムの最後に収録されている曲とのこと。

 さて、29日に開催の「あまりに暑いので北欧の映像を観ながらただお茶をするだけの会」(←微妙にタイトルがちがう気がするが)は、おかげさまをもちまして定員に達しましたため受付を締め切らせて頂きました。ありがとうございました。参加メンバーからして楽しい時間になりそうです。ご参加いただくみなさま、よろしくお願い致します!

24.07.2018

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 定休日。雑用ばかりで、ここに報告したくなるような楽しい話題は特になし。しかたないので、この半年くらいのあいだに手に入れたもので特に「買ってよかったモノ」を3つ紹介してお茶を濁す

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森永乳業「蜜と雪」

 じつは、最近プライベートではほとんど買い物らしい買い物はしていないのだが、よくよく考えたらほぼ毎日といっていい頻度で買っているものがあった。「アイスクリーム」である。なかでも森永乳業「蜜と雪」は、個人的にこの夏最大のヒットといっていい。

 その名の通り、濃厚な蜜の下にパウダースノーのようなキメ細かくクリーミーな氷がキュッと詰まっている。この夏のような常軌を逸した暑さには、こってりしたアイスクリームよりこうしたさっぱりした軽い氷菓の方こそ恋しくなる。ウェブサイトによると、いちご、抹茶、それにレアチーズと3種類あるようだが、まだレアチーズは見たことがない。1カップあたりのカロリーが162kcal、脂質1.9g(いちご)というのも「常習者」にはうれしい。

◎CRESCENDイヤープロテクター「MUSIC」

 突発性難聴を患ってから十年あまり経つ。言いかえれば、壊れたヘッドフォンを24時間つけたまま十年あまり暮らしてきたようなものである。まあ、それはいいというか、しかたないとして、めったにライブに行けなくなってしまったのは残念に思ってきた。大きな音、とりわけパーカッションやPAで増幅されたベース音などが体調のよくないときにはつらく、自然とライブの現場から足が遠のいてしまったのだ。

 ところが、最近ライブ用の耳栓なるものがあると知りためしてみたところ、想像以上の効果があり、またすこしずつ生の音楽も楽しむことができるようになった。ちなみに、ぼくが使っているのはCRESCENDというメーカーの「MUSIC」というイヤープロテクターなのだが、装着してみての印象は、「あまり変わらない?」「これホントに効果あんの?」と疑いたくなるくらい。だが、音の「衝撃」がうまいぐあいに吸収されるらしく終わった後のイヤな耳鳴りや詰まった感じがほぼないのでびっくりした。ぼくのように耳の悪いひとはもちろんだが、ライブ現場に頻繁に足を運ぶひともじぶんの耳を保護するという意味で積極的に使ったほうがいいと思う。生の音楽が聴きたいのに聴けないというのはけっこうキツイぞ。

◎finalカナル型イヤホンE2000

 もうひとつ、耳にかかわるものを。イヤホンは消耗品、ぼくはそう考えている。なので、基本3千円台で購入できるものしか選ばないのだが、それでもどうせ買うなら音楽を聴く楽しみが広がるような、なにか一癖あるおもしろいイヤホンを選びたい。そういうぼくは、もう何年もfinal(旧「final audio」)のイヤホンを愛用しつづけている。

 このカナル型イヤホン「E2000」は、マニア向けの高級なイヤホン(イヤホンで20万円とか!)を製造しているfinalのもっとも安価な商品でありながら、ちゃんと「攻め」の態度を失っていないところがすごい。やたらいろいろなところから音が聴こえてくる、ふだん聴こえないような楽器の音が聴こえてくる、小編成のクラシックやジャズからEDMまで幅広い対応力……。以前愛用していた「pianoforte」というモデル(製造中止)は、アコースティックはすばらしいがEDMはモコモコしてしまうという愛すべき個性派だったのだが、その意味では、このE2000はより優等生的といえそう。とにかく安いけれど、個性的なイヤホンを探しているひとには全力でおすすめできる。ただ、密閉性は弱めなので静かな環境で聴いたほうがより楽しめるはず。これはなかなかいい買い物。

22.07.2018-23.07.2018

 日曜日。女子4人でお化け屋敷に行った話を聞いていた。

 出かけた先にたまたまお化け屋敷をみつけ、ノリで入ってみようということになったのだが1人だけ怖がって「うん」と言わない。しかたがないのでひとまずカフェに入り、お茶をしながら3人がかりで説得したという。3対1である。こうなっては勝ち目はない。必要のない豪華な鍋セットだろうが、幸運を呼ぶ壺だろうが、言われるままに買ってしまうシチュエーションだ。けっきょく説得に応じ、晴れて4人でお化け屋敷に入ったのだった。

 お化け屋敷では、キャーキャー悲鳴をあげたり、なぜかノリノリで先頭に立っていたはずの友人が恐怖のあまり派手にすっ転んでしまったり、またそれを指さしてみんなでゲラゲラ笑ったりと想像以上に楽しかったらしい。そしてこの話を聞いていたぼくも、同じように楽しくなってしまった。他愛がないと言ってしまえばそれまでだが、ふつう無駄と思われることを一生懸命やるのは、ある意味最高の贅沢といえる。ずっと時間がたってから、ふと思い出して笑顔にしてくれるのは案外こういう時間の過ごし方だったりするものだ。すごくいい夏の休日を彼女らは過ごした。

 そういえば、まだ告知していなかったことを不意に思い出した。旭屋出版の雑誌「CAFERES」(旧「カフェ&レストラン」)8月号に先日受けたインタビュー記事が掲載されています。書店等でみかけたらチェックお願いいたします。

 月曜日。シナモンロールをつくるため、ひとりカルダモンの殻をひたすら剥いていた。こういう単調な作業はどうも苦手である。きっとみんなそうなのだろうと思っていたのだが、かならずしもそうじゃないと知ったのは、そのぼくが苦手な作業を「ここの仕事のなかで一、二を争う好きな仕事」だと言うスタッフが以前いたからだ。なんでも、「無心になれる」「(剥いているときの香りに)鎮静効果がある」そうである。「呼んでくれれば剥きにきますよ」。大学を卒業し、ここをやめるときにそう言ってくれていたのも案外本気だったかもしれない。遠慮せずに声をかけておけばよかったな。

 意外だったのは、今回SNSでつぶやいたところ、面倒くさいという意見にまじってちらほら「剥きたい!」とみずから志願する声が聞こえてきたことだった。そうか、この世界にはきっと2種類の人間がいるのだ。カルダモンの殻を剥きたいひとと剥きたくないひとだ。さて、アナタはどっち?

 ここで重要なお知らせです。今週の水曜日より2週間限定で、平日の営業時間が「夏時間」に変わります。後ろに1時間ずれて12時30分から20時(19時30分L.O)までです(週末はこれまで通り)。夕方になると風も出て多少しのぎやすくなる昨今、ぜひお仕事帰りにもお立ち寄りいただければと思います。ご来店お待ちしております。

21.07.2018

 土曜日。わけあってワンオペ。理由というほどの理由はないのだが、「わけあってワンオペ」という語感が変に気に入ってしまったので書いてみた。

 そうそう、語感といえば尾崎放哉の句にこんなのがある。有名な句だ。

 咳をしても一人

 いくら自由律俳句とはいえ、さすがにこれは自由すぎやしないか? 季語もなければ、語数もめちゃくちゃだ。六三なのか、それとも九か。それでも、これが許されてしまうとすればそれはまるで売れっ子のコピーライターがひねり出したかのようなその語感の気持ちよさゆえではないだろうか。
 もちろん、ただ語感のよさだけではダメだ。この放哉が詠んだ句には、レモンのような鮮烈さがある。胸にストンと収まる語感のよさにうつつを抜かしていると、不意に中からジュワッとほろ苦い孤独や侘しさが溢れ出してきて驚かされるのだ。
 これがもし「咳をしても十一人」だったらどうだろう。十一人と書いて「イレブン」と読ませる。「咳をしてもイレブン」だ。ひとまず語感はすばらしいが、なにを言っているのかさっぱりわからない。風邪気味のサッカーチームなのだろう。まあまあ、楽しげではある。

 サッカーといえば、ついにW杯は1試合も観ないうちに終わってしまった。べつに観たくないわけではないが、観なければ観ないで済んでしまう。なんというか、いまの自分にとってサッカーはソバの薬味のような立ち位置なのかもしれないな。
 そしておそらく、ぼくと同じくW杯を観なかった大平さんが夕方来てくれた。確認したわけじゃないが、ぜったい観てないよ大平さんは。で、そのW杯を観なかったであろう大平さんは、余白のうつくしい詩のような絵を描くひとである。
 大平さんと、最近観た長谷川利行の展覧会の話、それに『ストーナー』という小説の話などする。そういえば、大平さんの知り合いがやっているとてもすばらしいリトルマガジンがある。たぶん知っているひとは知っているだろう。『ぽかん』という。いい語感だなあ。

20.07.2018

 災害は、悲惨な光景ばかりでなく、ときとして「うつくしい心」をも見せてくれる。そう感じたのは、東日本が大きな地震による津波、それに原発事故に見舞われた際、救援物資の調達のための募金やボランティアの呼びかけに対して積極的に応えてくださるたくさんのお客様の姿に触れたときだった。そこに見たのは、なにか「してあげる」ではなく、ただただいま自分にできることを「しよう」という無数の「無私無欲な心」だった。

 いまから7年前の夏、 お客様のSさんが中心となり津波で流されてしまった写真をていねいに洗い、ふたたび持ち主の元に返そうというプロジェクトが吉祥寺で行われていたのだが、そのとき呼びかけに応じてボランティアに参加した多くのメンバーのうちのひとりにH田さんもいた。そのプロジェクトのなかでの彼の活躍はなかなか頼り甲斐のあるものだったようで、いつしかメンバーのあいだでH田さんは「父さん」という愛称で呼ばれるようになっていた、若いのに。

 そんなH田さんは、これは書いていいのかわからないのだけれど、この春、縁あって四国のある街に移り住みあたらしい仕事をして生活している。しんどくなったら無理をせずすぐにでも帰ってこいよと言ったのに、意地を張っているのかいまだに帰ってこない。ときどきSNSにあげられる穏やかな風景の写真をみるかぎり、未知の土地でのくらしも思いがけず楽しめているのかもしれない。

 数日前、いま愛媛県の水害の被災地でボランティアをしているとSNSを通じてH田さんから便りが届いた。馴れない土地での生活もまだやっと数ヶ月だというのに、こういうときの彼のフットワークの軽さにはほんとうに頭が下がる。しかも、きっと7年前の夏とおなじように、なにか大変なことを自分はやっているのだと主張するようなこともなく、ごはんを食べたり風呂に入ったりするのとおなじように炎天下でがれきの撤去作業を黙々とこなしているにちがいない。

 なにか、だれでもが知っているような偉業をなしとげた人はたしかにすばらしい。だが、そうした人たちと変わらないくらいぼくはH田さんのような無私無欲な心をもった人たちのことを、たとえ目立つことはなくても本当にすばらしいと思うし心から讃えたいとも思う。なんなら銅像のひとつも建てたいくらいなのである。まあ、銅像は無理でも、いつかせめてH田さんに似せた紙粘土の人形のひとつも作って彼をねぎらいたいとかんがえている。

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 きのう告知させていただいた「あまりに暑すぎるので北欧の映像を眺めつつただただお茶をして涼むだけの会」(←きのうよりタイトルが長くなっている?)、おかげさまで半分ほどお席が埋まりました。引き続き、いっしょに涼んでくださる方を募集中です。この会は、とくに常連さん限定というわけではないですし、北欧にくわしいひと対象というわけでもありません。また、いまのところみなさん1名さまでの参加ですので、なんとなく躊躇しているひとも気兼ねなくお申し込みください(じっさい、ただお茶をするだけの集いです)。では、みなさまよい日曜日を。

7/29あまりに暑いので北欧の景色を観ながらただダラダラとお茶を飲むだけの会

という、やたら長々しいタイトルのイベントをやります。イベントというよりは、なんかもう暑くていろいろイヤになってしまったのでみんなでお茶でもしつつ北欧の清涼感あふれる景色でも眺めない? というお誘いであります。

 

内容は、ぼくが秘蔵している北欧関係の映像(だいたい10年くらい前の?)の中からみなさんの投票により2本くらい選んで観ます。お飲み物とおやつ代1,000円いただきます。日時は、来週7月29日(日)の18時から19時半です。

もう暑いのは飽きた〜北欧に行きたい〜というひとが10名くらい集まってくれるとうれしいです。もし思ったよりも集まるようなら、次の週にでもあらためてセッティングします(ネタはあるので)。

 

北欧好きの暑気払いという感じで、ぜひご参加ください!! お申し込みは、お手数ですがメールでお名前、人数、お電話番号をお知らせください。

★ 7月24日記 受付は締め切らせていただきました。

 

ーあまりに暑いので北欧の景色を観ながらただダラダラとお茶を飲むだけの会ー

>日 時 7月29日(日)18時から19時30分

>会 場 吉祥寺 moi(カフェ モイ)

>お茶代 1,000円(お飲み物+おやつ)