5/16鈴本演芸場5月中席夜の部
何度聴いても、やっぱり小せん師匠の「御神酒徳利」は気持ちがいい。御礼に貰った小判をぜんぶ女中にあげちゃう心優しい善六さん。大坂から江戸に帰る言い立ても、なんて心地よいのだろう。
きょうは先代小さん師匠の命日だったそうで、小せん師匠「御神酒徳利」、扇辰師匠「道灌」、三語楼師匠「長短」など、孫弟子のネタ選びには<小さんトリビュート>な趣きも。
開口一番/一猿「寿限無」◎かゑる「弥次郎」◎アサダ二世(奇術)◎三語楼「長短」◎扇辰「道灌」◎ニックス(漫才」◎琴調「清水次郎長伝〜お民の度胸」◎歌奴「阿武松」〜お仲入り〜◎ぺぺ桜井(ギター漫談)◎文蔵「馬のす」◎二楽(紙切り〜学校寄席、安芸の宮島」)◎小せん「御神酒徳利」
〇〇の手も借りたい
もうどうしてくれるんだというくらい忙しいとき、よく「〇〇の手も借りたい」などと言ったりする。
「ネコの手も借りたい」。なるほど気持ちは伝わる。こっちがバタバタと忙しいとき、縁側でのんきにひなたぼっこなどしているネコの姿を見かけたら、いっちょコイツに手伝わせたろかという気分にはなるだろう。でも、実際のところネコにできる仕事がそうあるとも思えない。ネコがいれば癒される。が、癒されている場合じゃないのだ。かえって仕事が滞る。
じゃあ、孫の手はどうか。「孫の手も借りたい」。背中がかゆいわけじゃないんだよ、残念ながら。
飲食店で「〇〇の手も借りたい」という状況に陥ったとき、ぼくはよく考えるのだが、たぶん本当に「助っ人」として戦力になるのはコイツらだ。「アライグマ」と「千手観音」。どこかにいないだろうか、暇をもてあましているアライグマと千手観音。
<特別>なコーヒーを淹れています
世界でたったひとつのコーヒを淹れています。いま、あなたの目の前にあるコーヒーは、世界にふたつとない特別なコーヒーです。後にも先にも、同じ一杯を淹れるということはできないので、これは、まあ、わざわざ言うまでもない当たり前の話にはちがいないのですが、でも、あらためてその事実を思い起こしてみるとき、なんだかとても目の前のコーヒーが愛おしく感じられはしませんか?
青蛾
かつて新宿に「青蛾」という伝説の喫茶店があったことは聞き知っていたのだが、ぼくが中学生のときに閉店しているので当時のことについては実は何も知らない。その後「青蛾」は東中野に移転しギャラリーとして存続してきたが、いつだったか調べ物で訪れた新宿区歴史博物館で「青蛾」が喫茶を再開するというニュースを偶然知って訪ねるのをとても楽しみにしていた。しかも、日頃からなにかとお世話になっている「かうひい堂」の内田牧さんがコーヒーを担当されるという。建物こそにぎやかな山手通りに面した現代的な空間だが、家具やうつわは当時のものがそのまま使われているのが喫茶店好きにはうれしい。その上さらに、牧さんの淹れてくれるコーヒーを飲みながら好きな本が読めるなんてなんと贅沢なことか。レモン味とバター味の「青蛾」オリジナルクッキーもおいしい。なお、店内は禁煙。PC、携帯の店内での使用は不可なので、行かれる方は好きな本を片手に出かけましょう。
そして、明日10日(水)moiはお休みを頂戴致します。何卒よろしくお願い致します。
鼻血出てるよ
巷では運賃が100万円近くもするような超豪華列車が話題だが、その一方で<ブルートレイン>の愛称で知られた寝台特急が廃止されたまま復活の兆しが見えないのは返す返すも残念なことである。
ぼくが子供のころ、<ブルトレ>(注 ブルートレインの略)に乗ることは夢であり希望であり、またあこがれであった。飛行機ならコンコルド、電車ならブルトレ、伊東に行くならハトヤ。昭和の少年にとってのプレミアムとはそういうものだったのだ。
夢が叶って、ぼくが寝台特急「出雲」号に乗車したのは、たしか小学4年の夏休みのこと。正直、電車の揺れと騒音、「B寝台」の窮屈なベットは快適とは言い難かったが、「いま俺はブルトレに乗ってるんだぜ!」と世界に向かって叫びたくなるような興奮でとてもじゃないが眠っているような心持ちではなく、それもまったく気にならなかった。
深夜になっても眠くならなかったぼくは、寝静まったブルートレインの車内をせっかくなので探検してみることにした。
「ぼく?ちょっと」。しばらくすると、向こうからやってきた車掌さんがぼくを呼び止めた。ま、眩しい! 夢にまで見たブルートレインの車掌さんである。ジュリーが一本足打法でエレキングをやっつけるくらいのカッコよさである。ぼんやり口からヨダレが垂れるようなアホヅラで佇んでいるぼくに、車掌さんは言うのだった。「ぼく? ちょっと。鼻血出てるよ」。そう、ブルトレに乗った興奮で、小学4年のぼくは鼻から血を流したままそれにも気づかず列車内を徘徊していたのだった。そして、車掌さんはおもむろにトイレの扉を開け、ぐるぐるとトイレットペーパーを腕に巻きつけて出てくるとぼくの鼻の穴にトイレットペーパーを詰めてくれた。いまでもきっと、ゴワゴワの固いトイレットペーパーを鼻の穴に詰めさえすれば、ぼくはいつでもあの甘酸っぱい<ブルートレイン>の一夜を鮮やかに思い出すことだろう。
まあ、なにが言いたいのかというと、企業は、裕福なお年寄りや爆買いする外国人の懐ばかり狙ってないで子供が鼻血出すくらいの商品をつくってみろ! そう言いたいのであるよ。