このあいだの雨の日、フィンランドで研鑽を積んだ声楽家駒ヶ嶺ゆかりさんのミニコンサートを聴いてきた。「野の羊」という曲がよかった。大木惇夫の詩だ。男がひとり草原にやって来てつぶやく。「野っぱらはいいな。いつ来てみてもいいな。」気づけば、遠くにポツンと放し飼いにされたヒツジが一匹たたずんでいる。独りだな…… 毛並みはいいけれど、あまり目はかけられていないらしいな…… ひもじそうだな…… でも…… 恨まない目をしているな。男は思う。なんだ、オレと同じじゃないか。「野っぱらはいいな。さびしくていいな。」