moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

空は、

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 バスを待ちながら、ぼんやり空を見上げていた。ひさしぶりに青い空。光の波長がとかなんとか、でも、心情的にはあいもかわらず「空気は透明なのになんで空は青いの?」という小学校低学年のマインドに近しさをおぼえる。

 ところで、「空は、」(「空が、」でもかまわないけれど)の後にどんなことばを思いつくかで、じつはそのときの気分を知ることができるのではないか。

 たとえば、「空は、青い」といえば「あたりまえじゃん!」と返されそうだが、そんな当然のことにも驚いてしまうくらいなにかに忙殺されていたんだなぁと気づかされたり、気持ちが沈んでいるときには、おなじ「青」でもそこに「憎らしいほど青い」という感情が上書きされていることだってあるだろう。大きく伸びをしながら「空は、広い」と言うひとは、めいっぱいの開放感を味わっていることが伝わってくるし、イケイケの「無敵」なひとだったら、空の大きさに自分の無限大の可能性を重ね合わせたりしているかもしれない。

 そのときそのとき、じぶんの感情を鏡に映すみたいに空を見上げてどんなことばが連想されるか、たまにためしてみるのもちょっとした「心理テスト」のようで面白いかもしれない。

 ところで、きのうは定休日だったのだけれど、図書館を3軒ハシゴして気づいたらすっかり日も傾き、お休みも終わっていた。あたりをつけた資料をいろいろつぶせたのはよかったが、けっきょく思っていたような情報にはたどり着けず。それでも、消去法的にかんがえれば一歩「真相」には近づいたということか。刑事(デカ)かよ。

飛び地

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 すっかりご無沙汰しております。ご心配くださったみなさま、ありがとうございます。ひとまず元気です。リハビリ(?)に短い文章でもひとつ。

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 このあいだの休日、思い立ってふらりと横浜に行ってきた。なんとなく東京にいるのが息苦しくなって逃げ出したいような気分のとき、横浜に行ってぼんやり数時間を過ごして帰ってくるということをときどき、する。そこでは、とてもリラックスできることがわかったからだ。

 横浜は、子供のころからときどき足を運んでいたのでまったく見知らぬ土地というわけではない。いっとき、縁があって月に数度のわりあいで出かけていたこともある。なので地理もだいたいはわかっているし、たしかに旅のような非日常感はまるでない。だが、むしろその加減が、ぼくと横浜とのあいだの近すぎず、かといって遠すぎもしない「距離感」こそが絶妙で心地よいのである。つまり、ぼくにとって横浜という土地は「日常」のなかにポッカリと浮かんだ「非日常」、いってみれば「飛び地」のような存在なのだと思う。

 そしてまた、そんなふうにほどよく「遠い」からこそ、ぼくのなかの横浜にはほのかな「幸福な記憶」しかない。それもきっとよいのだろう。その点、東京には、長く暮らしていればこその楽しい思い出もあれば悲しい思い出もある。東京にいるかぎり、そこが生活の中心であるかぎり、そうした無数の思い出たちはぼくを放してはくれない。でも、それは仕方のないことだ。そのかわり、日常のかたわらにこういう「ぬるま湯」のような場所をもつことは、好むと好まざるとひとつの土地に根を生やしてしまった人間にとっては案外だいじかもしれない。

20.09.2018-24.09.2018

 以下、最近あったことを箇条書きで。

・朝、元気をだそうと思い人気のない道で変顔しながら歩いていたら、脇のマンションから出てきたひとにがっつり見られる。

・V系好きのスタッフから教えてもらった、ヴィジュアル系4バンドのメンバーたちが「業界の未来」について居酒屋で真剣に語り合うというテレビ番組を観る。それぞれのバンドにしっかり熱狂的なファンがついているためワンマンが基本で対バンはあまりやらないとか、インディーズにもかかわらず武道館や幕張メッセでのワンマンライブを成功させているバンドがいるとか、いろいろ知らなかったことも多い。

 V系に対する敷居を低くしたいというあるメンバーいわく「俺らって、無口とか、なんならメシも食わないと思われてるじゃないすか?」…… そ、そうなんだ。あと、みんな居酒屋で飲み食いしながら語っているのに、ひとりマスクを決してはずさないひとがいて謎だった。あとでスタッフに確認したところ、そのひとはいまだかつてマスクをはずしたことは一度もないのだとか。そしてそれは、衣装や詞、ジャケットデザインなどへのこだわりにも表れていて、すべてに対して固有の美意識があってけっしてブレない姿勢には感心した。登場した4つのバンドのうち、個人的にいちばんよかったのはBugLug、ちなみにスタッフは己龍のファンだそうです。笑

・インスタグラムに元スタッフが職場で顔面を負傷したと投稿しているのを見て、心配してビックリした顔文字をつけたつもりが、寝ぼけていたせいで手が滑って「爆笑」の顔文字をつけたまま寝落ちしてしまい、翌日必死のフォローに忙殺される店主。

18.09.2018-19.09.2018

◎18.09.2018

 このあいだテレビで、最近発見されたという晩年の藤田嗣治が吹き込んだ音声テープが紹介されていた。後世に肉声のテープを遺そうと思った理由が淡々と語られた後、人生の終盤を迎えつつあるそのときでさえなお枯れることのない旺盛な創作への情熱がなぜか芝居仕立てで本人によって唐突に演じられるのがおもしろかった。

 そしてさらに興味深かったのは、これについて浪曲師の玉川奈々福さんが、「芝居」ではなく明らかに「浪曲」の節回しであり、また啖呵であるとツイッターで指摘されていたことだ。奈々福さんによれば、じっさい藤田はフランスで二代目広沢虎造浪曲を愛聴していた形跡があるという。ただし、藤田のはかならずしも「虎造節」というわけではないらしいが。

 そういえば、ぼくの好きな久生十蘭の小説『魔都』にしても、最初の「口上」からしてまさに「講談」そのものである。もともとは雑誌「新青年」に連載されていたことを思うと、いわば講談の続き物のようなつもりで考えていたのかもしれない。藤田はもちろん、久生十蘭もフランス遊学の経験をもつ「モダニスト」である。当時としてはバリバリのモダンな感覚の持ち主であるはずの彼らがそうなのだから、ぼくらが想像する以上に当時の日本人にとって講談や浪曲は自分たちの血であり、また肉であったのだろう。

 午後、ちょっと日本橋、銀座界隈を買い物がてら散策したのち、自宅にもどりネットで映画を観る。なにも考えずただ笑えるもの…… と思って探したら、三谷幸喜が監督した『ラジオの時間』があった。かんがえてみれば、三谷幸喜の映画ってちゃんと観たことがない。

 生放送のラジオドラマをめぐるドタバタ劇だが、これはもう、プロットというか完全にキャスティングの勝利だよなあ。つまらなくなりようがないよ。そして、オヒョイさんも細川俊之もこの世にいないのか、と思いちょっとしんみりする。

 

◎19.09.2018

 そこそこ涼しく、そこそこ天気もよいのにひまな1日。目にみえないだけで、じつは地上にも「黒潮」のような流れが存在していて、それがお客さんを運んできたり、遠くに連れ去ったりしているのではないかと密かにかんがえているのだが。

 ひまなので、いろいろ溜まっていた事務作業をガシガシとやっつける。虚しいが、それなりに有意義な1日。あしたにはきっと潮の流れが変わりますように。

14.09.2018-17.09.2018

◎14.09.2018

 昼過ぎまで雨がパラつく。こんな空模様だし連休前だし、きっと暇だろうなあとタカをくくっていたら思いのほか忙しくさせていただく。ありがたい。ここのところずっとボーッとしているが、仕事になればそれ相応にスイッチが入るのはさすがオトナだな、と我ながら感心する。あたりまえ、か。

 

◎15.09.2018

 ヴィジュアル系バンドのメンバーたちが、閉塞状況にある業界を憂い、今後どうあるべきかについて真剣に語り合うという内容のテレビ番組をスタッフが観たそうだ。すっごく観たいな、それ。番組名ちゃんと聞いておけばよかった。

 夜は、デザインジャーナリストの萩原健太郎さんによる「公開取材イベント」。前日フィンランドから帰国したばかりのお客様、なんと当日の朝帰国したばかりというお客様もふくめ満員御礼。フィン好きさんたち、あいかわらずアツいです。

 今回はおもにフィンランドの映画、それに音楽について知りたいというリクエストが事前にあったので、みつくろった動画をいろいろご覧いただきながら説明をくわえてゆく。

 まずは、映画。「戦争」「こども」「アキ・カウリスマキ」というキーワードから、フィンランドの映画作品に通底すると思われる普遍的テーマを知っていただくことに。さらに、これは「ムーミン」の世界観ともつながっていることに注目。

 音楽については、北欧というひとことでは到底くくることのできないフィンランド音楽ならではの独自性と多様性とについて、それそれ「ガラパゴス」「シベリウス音楽院」というキーワードから説明させていただいた。トラッド、ジャズ、メタル、EDMからアイドルまで、ふだんモイではまずかからない音楽をガンガン流して楽しかった。

 スペシャリストではないので個々の作品についての知識は限られているが、こうした作品が生まれてくる背景、フィンランドらしさ(「スオミ臭」)を探り当ててゆくような作業はなかなかおもしろかった。萩原さん、貴重な機会をありがとうございました! そして、いつもながらお集まりいただいたみなさんの笑顔に助けられました!

 

◎16.09.2018

 三連休の中日(ちゅうにちじゃなく、なかび)らしい人出。ここのところ眠りが浅めだったので、何年振りかで缶ビールなど買ってみる。ちなみに「ほぼ下戸」。

 下戸のひとはわかると思うが、まず「気持ちよく酔っ払う」というのがよくわからない。ふつう、飲む→酔う(気持ちい、楽しいetc)→気分悪い、というのが本来の飲酒フローだと思うのだが、飲む→気分悪いというのが下戸である。じゃあ、ちょっと飲めばいいかと思うとそういう話ではないのが、また恨めしい。ちょっと飲む→ちょっと気分悪いとなるだけなのだ。缶ビール1本飲んで、それなりに具合が悪くなりつつ眠くなってきたので寝る。

 

◎17.09.2018

 胸焼けとともに目がさめる。胃腸が荒れているところにビールなど飲んだせいである。二日酔いってこんな感じなのだろうか? と胃をさすりながら出勤。三連休の最終日はいつもそうだが、風船がしぼむみたいに一気にお客様が消えてしまう。しかも、夕方突然の雨に見舞われてゲームセット。お天気はよくないが、気分的には少しだけ空が高くなった、かな。

13.09.2018

 すこしだけご無沙汰だったお客様から、夢に出てきたからこれは行かなくちゃと思って来た、と言われる。いよいよぼくも、なんだかわからんけど「すごい力」を身につけてしまったようだ。これを読んだみなさんの夢枕にも出没するかもしれないので、その際には大人しく出頭するように。

 用事があって知り合いのフィンランド人に電話したら、「墓のセールスだと思った」と言われた。道理で、やけに感じのわるい電話の出方ではあった。てか、なんで「墓」なんだよ!

   さて、土曜日のイベントだが(なんどもうるさくて申し訳ないが、終わるまではとにかく落ち着かなくて……)、ほぼほぼ喋りたいことは固まってきた感じ。ざっくり言うと、メタルを流しつつアキ・カウリスマキムーミンの意外な共通点について熱く語る予定。ご来場くださるみなさん、どうぞお楽しみに。