moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

26.6.2018

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 府中市美術館で「長谷川利行展 七色の東京」

 府中の美術館は近隣の小学校の団体鑑賞が多いが、あらかじめ予定をウェブサイトで確認しておけばかち合うことはない。今回は、昼休みの時間帯を狙ってゆく。

 利行は、猛烈なスピードで三原色を散りばめて一枚の絵を仕上げたという。実際、そんな荒々しさにまず目を奪われるが、その一方で、そこになんとも言いようのない繊細な詩情が流れていることに驚かされる。利行は、若い頃まず短歌の世界で頭角をあらわし、後になって詩作にも興じた「言葉のひと」である。それだけに、直観的に置かれたように見える色ひとつひとつにも、じつは利行なりのきっぱりとした論理というか文法があるのかもしれない。「フォービスム」というひとことで括るには、あまりにも多才なひと。

 会場の最後に飾られた一枚は、死の前年に描かれた「荒川風景」という作品。その「透明さ」はたじろくほどである。繊細な心を隠す鎧のような厚塗りはもはやなく、利行の存在はその風景の中にすっかり溶けてしまっていた。

 帰りは、そんなことをつらつら考えながら20分弱の駅までの道のりを歩いたのだが、さすがに連日の仕事疲れでボロ雑巾のようになっているからだに30度を超える炎天下はこたえた。不本意ながら、駅のチェーン店にかけこみ薄いアイスコーヒーで生き返る。

 乗り換えの新宿駅のコンコースで古本市が開かれているのを見つけ、ちらっと覗くつもりが気がつけば1時間半の滞在。