moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

飛び地

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 すっかりご無沙汰しております。ご心配くださったみなさま、ありがとうございます。ひとまず元気です。リハビリ(?)に短い文章でもひとつ。

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 このあいだの休日、思い立ってふらりと横浜に行ってきた。なんとなく東京にいるのが息苦しくなって逃げ出したいような気分のとき、横浜に行ってぼんやり数時間を過ごして帰ってくるということをときどき、する。そこでは、とてもリラックスできることがわかったからだ。

 横浜は、子供のころからときどき足を運んでいたのでまったく見知らぬ土地というわけではない。いっとき、縁があって月に数度のわりあいで出かけていたこともある。なので地理もだいたいはわかっているし、たしかに旅のような非日常感はまるでない。だが、むしろその加減が、ぼくと横浜とのあいだの近すぎず、かといって遠すぎもしない「距離感」こそが絶妙で心地よいのである。つまり、ぼくにとって横浜という土地は「日常」のなかにポッカリと浮かんだ「非日常」、いってみれば「飛び地」のような存在なのだと思う。

 そしてまた、そんなふうにほどよく「遠い」からこそ、ぼくのなかの横浜にはほのかな「幸福な記憶」しかない。それもきっとよいのだろう。その点、東京には、長く暮らしていればこその楽しい思い出もあれば悲しい思い出もある。東京にいるかぎり、そこが生活の中心であるかぎり、そうした無数の思い出たちはぼくを放してはくれない。でも、それは仕方のないことだ。そのかわり、日常のかたわらにこういう「ぬるま湯」のような場所をもつことは、好むと好まざるとひとつの土地に根を生やしてしまった人間にとっては案外だいじかもしれない。