moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

28.07.2018-29.07.2018

28.07.2018

 土曜日。東から西へ進む「変な」台風12号が到来。予想よりも進路が西にずれたおかげでそこまでの影響はなかったものの、夕方前から周期的に滝のような雨に見舞われる。さすがに人通りもなくなってきたので、閉店時間を繰り上げて17時30分で閉めさせていただく。帰り道、平日よりもはるかに人影のまばらな吉祥寺の街が新鮮。

 そんななか、荻窪時代によく来てくださっていたお客様が激しい雨のなかひょっこり現れたのでびっくりした。どうしても買いたい生地があって来たという。いまや3児の母として多忙な日々を送っている彼女だが、そういえば結婚される前はよくパーツ屋さんで仕入れた材料を器用に使いすてきなアクセサリーを自作していたっけ。

 なんか気がついたら誰もいなくなってた! とケラケラ笑う彼女に、わざわざこんな嵐の日に来なくてもと思ったが、そうか、きょうのこの時間は、家事や子育てに追われる彼女にとってはきっと貴重なみじかい「自由時間」だったのだろう。そりゃ、大雨くらいじゃあきらめられないよね。それにしたって、よりによってそんなタイミングを狙ってやってくるとはなんて間の悪い台風か。「台風のアホ! すこしは空気読めや!」かわりに、黒々とした雲に悪態をついておいた。

 ところで、今回の台風についてテレビやラジオの天気予報ではさかんに「これまでの経験が通用しない」という言い方をしていたのだが、一生懸命なわりにいまひとつ伝わらない表現だなあと思いつつ聞いていた。

 というのも、たしかに猛烈な高気圧にブロックされてふつうとは逆に進路をとる台風というのは異常だし、それによってふだんとはちがう風の吹き方など「これまで経験したことのない」現象が起こりうるというのもよくわかるのだが、それはあくまでも「いつもの」台風についてデータを蓄え、分析している専門家の目線での話ではないか。一般人にとって台風といえば、強い風と強い雨、それによって引き起こされる水害や土砂災害であり、右から来ようが左から来ようが正直あまり関係ない。まあ、もしも雨のかわりにスープカレーが降ってくるとか、あるいは台風が下からやって来るとかすればさすがにみんな「ワォ!初体験!」となるかもしれないが。

 

29.07.2018

 日曜日。数日前はしのぎやすかったのに、台風がものすごい湿気を運んできたせいで東京全体が「シャワーを浴びた直後の換気の悪い浴室」みたいな状態になっている。勘違いして、おもむろに服を脱ぎだすヤツが発生しないとよいが。

 かねてよりお願いしてあったグスタフ・ラムステッドの日本滞在記をみほこさんからお借りする。ラムステッドは、初代の駐日公使として大正9年から昭和4年まで日本に暮らしたフィンランド人。戦前の浅草にいたフィンランド人の踊り子姉妹のことをなんとなく調べているのだが、彼女らが日本でラムステッドと面会したという典拠のわからない話があり、そのウラを取るため読みたかったのである。みほこさんからは、くわえてラクリッツ(=リコリス)も大量にいただいたのだが、うっかり夜のイベントで出し忘れてしまった。これを消費するためだけのために、なにかあたらしいイベントを企画しないと!?

 パンイチ! に出店していた「ふたつの木」の愛さんからクリームパンの差し入れをいただく。それが、なんとハリネズミのかたちをしているのだ。ハリネズミ型のチョコレートは見たことあるがパンは初めて、かな。かわいい。ぼくはお尻から、スタッフは頭から食べた。どちらがどうとはあえて言わないが。それにしても、愛さんがつくるお料理やお菓子はいつもながらやさしい味をしている。しみじみ美味しい。

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 17時30分で店を閉め、夜はイベント。先日の猛暑つづきのときになかばやけっぱちで企画した納涼イベントだが、とくにこれといった趣向があるわけでもないのに予想以上のお客様の参加をえてうれしいかぎり。趣味をおなじくする人たちと好きなものを共有するとき、みな気づけば笑顔になっている。「個人店」というのもまさにそれで、万人向けよりはおなじ趣味を有する人たちが集まることでつくられるスペシャルな空間であり、その意味で毎日がイベントみたいなものなんだよなと思う。というわけで、毎回記載するたびに微妙に変化するこの日のイベントのタイトルは、最終的に以下のとおり確定したいと思う。「この夏北欧に行けない人たちが、お茶を飲んだり北欧の映像を観たりしてダラダラ過ごし、最後笑顔になって帰る会」。また、参加したいという声もいくつかいただいているので、8月のうちにあと一度くらい開催したい。

 イベント終了後、片付けをしてなにげなく時計を見たらちょうどフジロックの中継でダーティー・プロジェクターズのライブがはじまるところだった。これがもうカッコよくて、彼らのアルバム全体に通底する美意識はそのままに、ライブならではのややラフな感じが加わってまるで生きもののように動き回る躍動感がある。

 この感動を共有したいと思ってむかし彼らのアルバムを聴かせてくれたスタッフにメールをしたところ、「外出していて観ていない」との返信があり、テンションが熱帯低気圧なみに急降下する。


Dirty Projectors - Break-Thru (Official Video)