moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

20.07.2018

 災害は、悲惨な光景ばかりでなく、ときとして「うつくしい心」をも見せてくれる。そう感じたのは、東日本が大きな地震による津波、それに原発事故に見舞われた際、救援物資の調達のための募金やボランティアの呼びかけに対して積極的に応えてくださるたくさんのお客様の姿に触れたときだった。そこに見たのは、なにか「してあげる」ではなく、ただただいま自分にできることを「しよう」という無数の「無私無欲な心」だった。

 いまから7年前の夏、 お客様のSさんが中心となり津波で流されてしまった写真をていねいに洗い、ふたたび持ち主の元に返そうというプロジェクトが吉祥寺で行われていたのだが、そのとき呼びかけに応じてボランティアに参加した多くのメンバーのうちのひとりにH田さんもいた。そのプロジェクトのなかでの彼の活躍はなかなか頼り甲斐のあるものだったようで、いつしかメンバーのあいだでH田さんは「父さん」という愛称で呼ばれるようになっていた、若いのに。

 そんなH田さんは、これは書いていいのかわからないのだけれど、この春、縁あって四国のある街に移り住みあたらしい仕事をして生活している。しんどくなったら無理をせずすぐにでも帰ってこいよと言ったのに、意地を張っているのかいまだに帰ってこない。ときどきSNSにあげられる穏やかな風景の写真をみるかぎり、未知の土地でのくらしも思いがけず楽しめているのかもしれない。

 数日前、いま愛媛県の水害の被災地でボランティアをしているとSNSを通じてH田さんから便りが届いた。馴れない土地での生活もまだやっと数ヶ月だというのに、こういうときの彼のフットワークの軽さにはほんとうに頭が下がる。しかも、きっと7年前の夏とおなじように、なにか大変なことを自分はやっているのだと主張するようなこともなく、ごはんを食べたり風呂に入ったりするのとおなじように炎天下でがれきの撤去作業を黙々とこなしているにちがいない。

 なにか、だれでもが知っているような偉業をなしとげた人はたしかにすばらしい。だが、そうした人たちと変わらないくらいぼくはH田さんのような無私無欲な心をもった人たちのことを、たとえ目立つことはなくても本当にすばらしいと思うし心から讃えたいとも思う。なんなら銅像のひとつも建てたいくらいなのである。まあ、銅像は無理でも、いつかせめてH田さんに似せた紙粘土の人形のひとつも作って彼をねぎらいたいとかんがえている。

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 きのう告知させていただいた「あまりに暑すぎるので北欧の映像を眺めつつただただお茶をして涼むだけの会」(←きのうよりタイトルが長くなっている?)、おかげさまで半分ほどお席が埋まりました。引き続き、いっしょに涼んでくださる方を募集中です。この会は、とくに常連さん限定というわけではないですし、北欧にくわしいひと対象というわけでもありません。また、いまのところみなさん1名さまでの参加ですので、なんとなく躊躇しているひとも気兼ねなくお申し込みください(じっさい、ただお茶をするだけの集いです)。では、みなさまよい日曜日を。