moiのブログ 日々のカフェ season3

東京・吉祥寺の北欧カフェ「moi」の店主によるブログです。基本情報は【about】をご覧ください。

07.07.2018

 広範囲にわたって、しかも1週間以上おなじ地域を断続的に豪雨が見舞う。こんなこと過去にあったろうか? ちょっと思い浮かばない。被害を受けた地域が広すぎて救助活動が追いつかないといった状況も含め、東日本大震災のときの津波被害の映像を否が応にも思い出して重苦しい気分になる。そして、そんなタイミングでの千葉県を震源とするM6の地震である。ここのところ、ふだんとは明らかにちがうことが多かったのである程度覚悟していたとはいえ、実際に揺れるとやっぱりイヤなものだ。

 こういうことがあると、いま立っている足元なんてじつは自分が思っているほどには広くはないし、また堅固でもない、そんなふうに思えてくる。政治もこんな塩梅だし、巨大地震もそう遠くない将来起こるだろう。喫茶店でのんびりお茶をする。そんなありふれた、いつでもできると思っていたことが、振り返ればとてもぜいたくで、貴重な平和なひとときだった、そう思う日がいずれやってくるのではないか。というのも、こういうささやかな、嗜好品のようなことほどまず真っ先に失われ、そして戻ってくるのは最後の最後と決まっているからだ。

 ぼくは基本ペシミストなので、これからおそらく到来するであろう「冬」をいかにして生きるか、なにを心のよりどころにして耐え抜くか、そんなことばかりつい考えてしまう。たくさんのモノを所有するよりも、だからぼくはたくさんの思い出、たくさんのよい時間の記憶を持ちたい。壊れ、失われ、またときに奪われてしまうモノにくらべて、他人は誰かの思い出を奪うことはできない。そして、いつでも好きなときにぼくらはそれを引っ張り出し、味わうことができる。 

 はたして残された時間がどれだけあるかはわからないが、とにかく、ちいさな、楽しい時間の記憶をできるだけたくさんいまのうちからストックしておきたいものだ。それはきっと、最悪のときにぼくを救ってくれるものだから。