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店をはじめてかれこれ16年になる。16年にもなるのに、いまだにすっきり答えることのできない質問がある。 カフェとはなにか? あるアメリカの社会学者は、それを「サード・プレイス」、つまり家庭でも職場でもない第3の「居場所」と言った。なるほど。ただ…
そのお客様は、趣味のため休日ごとに旅に出ている。日本全国津々浦々、いや、ときには海外への遠征もある。それはそれで充実した毎日だが、ときどき、こんな生活を長く続けていてよいものか不安な気分に見舞われるという。じっさい、貯金も目に見えて減った…
ここのところ毎日2回ずつくらい、最近知った《フィロソフィーのダンス》というアイドルグループの『Funky but Chic』というアルバムを聴いている。 収録された全10曲、さすが<楽曲派>と呼ばれているだけにマニアックかつ完成度の高い楽曲が並び、しかも変…
Bunkamuraザ・ミュージアムで『マリメッコ展 デザイン、ファブリック、ライフスタイル』をみる。 時代の変遷とともに、マリメッコはどう変わり、また変わらなかったのか。そんなところを気に留めながら会場をみてゆく。 創業者であるアルミ・ラティア、そし…
あけましておめでとうございます。酉年にちなんで、先日美術館で出会った一枚の「鳥」の絵を。 畑中優「意志*」(2011 板・油彩 15.7×22.6cm)。 これは、仏文学者で音楽や美術にかんする著作も多い粟津則雄がかつて収集し、その後練馬区立美術館に寄贈した…
昼過ぎ、谷中のギャラリーTENに到着。毎年、オープン以来お世話になっているフィンランド好きのお客様方が、ここで『Lämmin Joulu〜あたたかいクリスマス』というグループ展を開催されている。 フィンランドをモチーフとしたハンドメイドのバッグやアクセサ…
シャーリイ・ジャクスンのビターな短編集『くじ』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読む。断っておくとこれ、いわゆるミステリじゃないです。ブラックユーモア+サイコ・スリラー+奇妙な味がブレンドされた物語が22編。 表題作となっている『くじ』は、雑誌「ニ…
「おとな視力」について書く。「老眼」とも言う。早いひとは三十代で始まるというのだから、せめて「おとな」くらいにしておく気遣いはできなかったのか、命名者よ。 じつはここ数年、ぼくもすっかり目がアダルトになってしまい苦労している。近いところの焦…
ポストをのぞいたら、bar bossaの林さんが選曲した、最近出たばかりのCDが投函されているのをみつけた。おなじく最近出たばかりの林さんの本『バーのマスターは、「おかわり」をすすめない』(DU BOOKS)の〝サントラ〟とのことである。林さん、いつもお気遣…
入ろうか、入るのやめようか、店先で思案している姿をよくみかける。はじめての店の敷居をまたぐのにはなかなかな勇気を必要とする。ひとりでは店に入ることができない。あるいは、なにをしていいか判らない、手持ち無沙汰、そんな声もよく耳にする。他人と…
ここ数ヶ月、私事でバタバタしていたせいでしばらく寄席からも遠ざかっていた。およそ7ヶ月ぶり。迷走する台風10号の進路に気をもみながらの池袋演芸場。ーーー 池袋演芸場 八月下席昼の部 千秋楽 ーーー開口一番 小かじ「二人旅」 ◎三遊亭わん丈「こじらせ…
◆ 渋谷のランドマーク「109」をはじめ、数々のポスト・モダン建築で知られる建築家・竹山実。『そうだ!建築をやろう―修業の旅路で出会った人びと』(彰国社)は、札幌に生まれ学生時代を東京で過ごした彼が、その後アメリカからデンマークへと渡り歩くな…
◆さくらさくら 人が人を呼ぶ。これは、お店をやっているとよくわかるが、ほんとうである。満席で、どこからどう見てもこれ以上は無理というようなときにかぎってお客様は次々とやってくるものだが、誰もいない店内で「さぁ、どんどん来てください!」とばか…
◆ぐうの音も出ない ワタリウムでリナ・ボ・バルディのすごくいい展示を楽しみ、さてこれからどうしようと考えたら、ひさしぶりに浅草へ出るというアイデアが閃いた。アンジェラスでコーヒーを飲み、弁天でソバを食うのだ。昼はもうとっくに過ぎているが、ひ…
外苑前のワタリウム美術館で「リナ・ボ・バルディ展」をみてきた。とにかく、ゾクゾクするくらい感激した。 リナ・ボ・バルディは、1914年イタリアのローマに生まれた〝ブラジルの〟建築家。大学で建築を学んだが、卒業後はジオ・ポンティのもとでデザイン関…
◆通なひと 掲載されていないにもかかわらず、店内でちらほら雑誌「Hanako」の吉祥寺特集を手にしたお客様をみかけるようになり、そのたび、たぶん自分だったらまず掲載されているお店に行くよなァとちょっと不思議な気分になる。(掲載店はどこもみな混雑で…
◆ついに、いきつけの肉屋でひとことも発することなく品物が出てくるまでになってしまった。「楽でいいか」と思う反面、「いつもの」くらいは言わせてくれ、そんな気もしないではない。「いつもの」とはつまり、たくさんの「いつものじゃないヤツ」の中から選…
◆鉛色の空に冷たい北風。そんな塩梅なので、当然のごとくお客様の少ない1日でした。それにしたって、オーダーの入ったドリンクがすべて「あたたかいコーヒー」、コーヒー100%というのは13年超の営業で初めてのこと。もっとお客様の少ないときもあったとい…
パンケーキを焼いていて、写真をInstagramにあげようと色々いじっていたら見事に焦がした。 歩きスマホで地下道を歩いていて、出口だと思って右折したところ出口ではなくその先の女子トイレに入ってしまった。 大人げない。これでは、スマホに乗っ取られたデ…
きょうは、巷で話題のいま最高にクールな動画を紹介するぜ!(アメリカの健康器具のCM風)。それは、 前面展望 です!!! いきなり「前面展望」と言われても、おそらくたいがいのひとはピンとこないでしょう。かく言うぼくも、数週間前まではそうでした。 …
きょう2月14日は「ヴァレンタインデー」ですね。 この日不二家のハートチョコレートを貰えるか否かが、昭和の小中学生男子には人生を左右するほどの一大事でありました。そう、「不二家ハートチョコレート」は当時の少年にとってはゴディバの数百倍も価値の…
歴史に名を残す画家たちの〝最後の日々〟を、身近で接した女性たちの眼をとおして描き読後に静かな余韻を残す短編集。 登場するのはマティス、ドガ、セザンヌ、そしてモネの4人。たとえば、マティスをとりあげた『うつくしい墓』は、老いてなお枯れることを…
菊志ん師匠には寄席が似合う。 浅めの出番で高座に上がり、それまで重たかった客席の空気をガラッと変えて下がってゆく、そんな場面に幾度か出くわした。〝仕事人〟という呼び名がぴったりの噺家。 じつはなにをかくそう、師匠がトリを務める日に寄席を訪ね…